Personnel
: Jimi Hendrix
(vo,g), Billy Cox (b), Buddy Miles (dr,vo)
Producer : Heven Resarch
ジプシー・サン・アンド・レインボウズつづく第三のバンドが、黒人で固めたバンド・オブ・ジプシーズ(以下BOG)。本作は、そんな彼らの初舞台となったフィルモア・イースト(NY)で行われた4回のステージからピック・アップしたものだ。
BOG結成の背景には、ビジネス面でのいざこざが横たわっていて、これはBOGの話になると必ず取り沙汰される話。何でも、ジミがまだ駆け出しの頃に結んでいた複数の契約がこの時期になって、その効力を訴えてきたものだから、要求を満たすために場渡り的に新バンドを結成してコンサートを開いて、契約を全うしたというもの。
こういった話は、ビジネスとは対極と言ってもいい世界にいるアーティストにはありがちな話で、それだけジミの存在が大きかった(ビジネス的にも)ということでもある。一躍売れっ子として時流に乗った漫才師が、さんざん銀座やなんかで大盤振る舞いしたまではいいけど、いざ確定申告となると莫大な所得税が払えないでふりだしに戻ったなんて失敗談をよく耳にするが、そんな事例と似てなくもない気がする。まあ、とにかく本作『BAND
OF GYPSYS』は複雑な状況下で発売されたのである。
ジミが言うには、このアルバムは不本意だそうだ。前述のような理由もあるだろうが、ジミ自身の不本意の理由は、その完成度の低さにあったのだと思う。彼のように音というものをとことんまで突き詰め(ビジネス度外視で)、とにかく異常なまでのこだわりを持って作品を作り上げて行く人間には、あまりにも安易かつ即席的なこのアルバムは、当然納得のいくものではなかったのだろう。ジミのプライドを無視した、妥協の塊のような仕上がりだったに違いない。
しかし、このアルバム、そんなジミをよそに売れ行きの方はすこぶる好調で、アメリカ・イギリス両国でトップ10入りしている。確かにジミはこのアルバムが気に入っていなかったかもしれないが、僕たち聴く側にとっては実に新鮮なものだ。
何が新鮮って、今までと音が全然違う。ソウルフルである。ファンキーである。今では、彼の活動時期全体を見渡してひとつの時代として冷静に受け止めがちになるが、当時このアルバムを聴いた人、そして実際にフィルモア・イーストに足を運んだ人たちは、相当驚いたことと思う。BOGのサウンドは、彼の活動時期の中では、最も顕著なサウンドの違いを見せてくれるものである。それゆえに、賛否両論分かれるところではあるのだが。
ご承知の通り、本作には目新しい曲が顔を出している。「Who Knows」「Them Changes」「Power Of Soul」「We Gotta Live Together」の4曲が、その目新しい曲たちでBOGのオリジナル曲である。いずれもソウルフルでファンキーなものでジミの新たな切り口を楽しめる内容となっている。
本作は、これらの曲の目新しさが前面に出てくるために、既存の曲(「Message To ove」「Machine Gun」など)の存在がどうも薄くなってしまっている節がある。しかし、どうしてどうして、こうした曲の演奏も素晴らしい。そこでは、BOGらしい目新しい演奏と同時に、70年に繋がるジミの奥深い演奏も楽しめるのだ。
その陰鬱とした発売背景故に、とかくマイナス・イメージのつきまとう本作だが、ジミの活動時期でこれほどまでに分かりやすい違いを見せてくれている唯一の作品と言ってもいいと思う。BOGはこのライブの後、ウインター・カーニヴァル・フォー・ピース(1970年1月28日)でわずか2曲を演奏しただけでステージを去り、解散となってしまった。非常に短いバンド生命ではあったが、70年のジミを導き出す重要な起爆剤になったことは間違いないだろう。
May
15th 1999 K.Seki