オフィシャルのレビュー(英語版)では、「実は難しいドラミングなのだ。」というような、今まであったバディー・マイル
ス批判をオフィシャルの説得力で覆そうとしているが、そうはいかない。聴くものにとって、バディーのドラムが単調に
聞こえてしまい、そして結果的にバンド・オブ・ジプシーズというひとつの集合体をおとなしすぎると感じさせてしまう以
上、たとえそれが「実は難しい。」ものであれ、納得はできないのだ。
 音楽では、特にアドリブ性の高い音楽では、妙な理屈は通用しないのである。個々のメンバーが感覚的に創出する
その場限りの音の攻めぎ合いこそがものを言うのであって、「実は高度なテクニックなのだ。」という後から付いてくる
弁解がましい理屈は必要ないのである。
 
 ミッチが自らもジミと同じベクトルの方向で叩きながら、しかし常にジミのプレイの方向を意識しているドラミングと比
較して、バディーのそれは、ジミの前だけではなく大観衆、あるいはジミのバンドとしてのバンド・オブ・ジプシーズを取
り巻く環境に縮み上がり、結局はジミの音の行く末が読みきれずにリズムをキープすることだけに終始してしまってい
る何の主体性もないものになってしまっているのだ。
 
 こんな感情を内に持ったまま、このアルバムを聴いていると、「歌なんか歌ってないで、さっさと叩け叩け!」と言いた
くなって仕方がない。
 しかし、このような嫌悪感をこのアルバムに感じてしまうのは、バンド・オブ・ジプシーズをジミの第3のバンドとして捉
えるからであって、これをジミのセッション・アルバムだと考えれば、あらゆる方面からのマイナス・イメージが払拭され
逆にジミの新たな一面が垣間見れる興味深い一枚だとも言えるのだ。

 何はともあれ、21世紀を間近に控えたこの時期になっても、ジミの音源がオフィシャルの形で世に出てくるというのは
うれしいことだ。また、わずかに4年という活動時期にもかかわらず、今もなおジミがこの時代でプレイしているかのよう
な錯覚を起こさせる”EXPERIENCE HENDRIX”の巧みな演出には、目を見張るものがある。
 アランの手を離れて本当に良かった。と言いたい。


Personnel : Jimi Hendrix (vo,g), Billy Cox (B,vo), Buddy Miles (vo,dr)
Venues : Fillmore East, 2nd Avenue 6th Street, New York, USA.

Disc One :
1. Stone Free / January 1. 1970 2nd show / 12:56 *Officially unreleased
 ソロ突入直後のユニバイブ・サウンドの強烈なインパクトに耳を奪われる。緩急溢れるプレイが聴き応え十分。

2. Power Of Soul / January 1. 1970 1st show / 6:19 *Officially unreleased
 3分以上の長いイントロから、ジミがヴォーカルをとる。コンパクに聞こえるが、自由度の高い曲だ。

3. Hear My Train A Comin' / December 31. 1969 1st show / 9:02 *Remastered
決してパワフルなプレイではないが、重厚なファズトーンが織り成す緻密なプレイが印象的。

4. Izabella / December 31. 1969 1st show / 3:40 *Officially unreleased
 展開時のビリーのベースがさすがと思わせる。アグレッシブなソロではないが、徐々に弾きこまれていく。終盤のギタ
 ーとのユニゾンからきれいにまとめている。

5. Machine Gun / January 1. 1970 2nd show / 11:35 *Officially unreleased
 ジミらしさ爆発といった感じ。ただ、バディーが、ジミの意図を読みきれていない。後半は、すっかりビリーのペースに
合わせてしまっている。

6. Voodoo Child (slight return) / January 1. 1970 2nd show / 6:01 *Officially unreleased
 ビリーのベースがイマイチ。得意の曲途中からの息抜きとも言える展開で、ソウルフルなプレイが聴ける。そのまま、
 ”We Gotta Live Together”へ。押さえておきたいパターンのひとつだ。

7. We Gotta Live Together / January 1. 1970 2nd show / 9:55 *Long version
 ”Voodoo Child”から雰囲気を残しつつ、繋いでいる。オーディエンスと一体となってのプレイ。


Disc Two :
1. Auld Lang Syne / December 31. 1969 2nd show / 3:54 *Officially unreleased
 ジミのアレンジ・センスが光る。まさに音を知り尽くしている者の技。

2. Who Knows / December 31. 1969 2nd show / 3:55 *Officially unreleased
 前曲からのスムーズな入り方は、カッコイイ。自由度の高い曲。

3. Changes / December 31. 1969 2nd show / 5:38 *Officially unreleased
 バディー・マイルスがヴォーカルをとるバンド・オブ・ジプシーズらしいコンパクトで、ソウルフルな曲。

4. Machine Gun / December 31. 1969 2nd show / 13:36 *Officially unreleased
 全体的におとなしい。ドラムは単調で、ジミの音を掴みきれずに、結局はおきまりのパターンから脱することができな
 いままダラダラと終わってしまう。

5. Stepping Stone / January 1. 1970 1st show / *Officially unreleased
 この曲を単独でプレイするのは珍しい。ネタの少なかったバンド・オブ・ジプシーズが伺える選曲。

6. Stop / January 1. 1970 1st show / *Remastered
 バディーがヴォーカルを努めるハワード・テイトのカバー。

7. Earth Blues / January 1. 1970 2nd show / 5:58 *Officially unreleased
”RAINBOW BRIDGE”ではお馴染みだが、これもステージでプレイするのは珍しい。もともとインストだった曲だけに
 自由度は高い。

8. Burning Desire / January 1. 1970 1st show / 8:23 *Officially unreleased
盛り上がってからの手数の豊富さは圧巻。3分30秒あたりからのプレイにはジャズに通ずるものがある。展開が多く、
様々に色を変えてくる曲だ。

9. Wild Thing / January 1. 1970 2nd show / 3:07 *Officially unreleased
 初期のようなアグレッシブなプレイではなく、ソロはじっくり弾きこんでいる。ファンへのサービスといったところか。

March. 12th. 1999 - K.Seki


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