しかし『THE BLACK ELVIS PLAYS AMERICA』とはすごいタイトルを付けたものだ。
『JIMI PLAYS MONTEREY』をシャレたかどうかは分からないところだが、ずいぶんと大きく出た感はある。
とはいうものの、このアルバム。内容の方は、その名に恥じないなかなかの内容だ。1枚で4度おいしいといったところである。1968〜1970年のアメリカの4公演を収録したもので、特に70年代フリークの僕にとっては、テンプル・ユニヴァーシティ・スタジアムの登場は、それは買わない訳がないのである。やや値段は張るものの、70年のテイクが聞けるとあれば、そんなこたあ後の始末。
マイアミ・ポップ・フェスティヴァル
May 18th 1968
さて、ご覧の通り1〜4はUNDERGROUND POP FESTIVALとクレジットされているが、こちらはかのマイアミ・ポップ・フェスティヴァルのことである。この日のエクスペリエンスは2回のステージをこなしてしている。
翌日19日(日)にも同会場で行われる予定だったが、残念ながら激しい雷雨のためにキャンセルとなってしまった。本アルバムにはわずかに4曲しか収録されていないが、それでもエクスペリエンスの主だった曲が収録されているので満足度は高い。録音状態もなかなか良く、各パートのバランスもいい。特に「Getting My Heart Back Together」は、各年代の演奏を聞くことができるので、その成長ぶりを楽しむのも一興。「Purple Haze」終了後のノエルが「Thank you very much」とまたしてもジミを差し置いて、オーディエンスに応えている辺り、いかにもである。
デンバー・ポップ・フェスティヴァル
June 29th 1969
次は、ウッドストックの夏が始まる6月29日(日)に行われたデンバー・ポップ・フェスティヴァルからのテイクだ。この日はエクスペリエンス、いやノエルにとっての最大の屈辱の日となってしまった。プレスの一人に「ここで一体何をしているんだい?君はもうバンドを抜けたんじゃなかったのか?」なんて言われてしまったもんだから、かわいそうなノエル氏はステージ終了後、故郷英国に帰ってしまったのだ。
そんでもって、この日が本当にノエルの最後となった訳である。おまけにこの日は暴動が勃発。警官隊が催涙ガスをぶちまける始末。さすがのジミも「催涙ガスが撒かれてようだが、どうやら第三次世界大戦の幕開けらしい」などとシャレたコメントを残している。とまあ、公私ともにゴタゴタの多い、デンバー・ポップ・フェスティヴァルだが、肝心のジミの演奏の方は、そんなものをものともしない素晴らしい出来だ。「Tax Free」〜「Getting My Heart Back Together」といういずれも10分を超える演奏を連チャンされてしまったら、これはもう強烈である。
「Getting My Heart〜」の方は、サン・ホゼ・ポップ・フェスティヴァル系のノリで、ソロからの濃厚なフレーズの嵐が聞き所。ちなみこのアルバムでは、最後のおきまり「Star Spangled Banner」〜「Purple Haze」〜「Voodoo Child」がカットされている。悲しくもこのステージが、エクペリエンスの最後のステージとなり、ノエルは去った。そして、7月10日にはベースにビリーを迎え、JOHNNY CARSON TONIGHT TV SHOWで「Lover Man」を演奏している。
ウインター・カーニヴァル・フォー・ピース
January 28th 1970
DISC2に移って、今度はバンド・オブ・ジプシーズの最後のステージとなったウインター・カーニヴァル・フォー・ピース。「たった2曲?」って驚くかもしれないが、これでも完全盤である。悲しくもバンド・オブ・ジプシーズ最後のステージは、ジミのやる気度の極度の低下により、わずかに2曲を演奏してステージを去るのである。
「Who Knows」の時は、それほど調子も悪そうではなかったが「Earth Blues」がヒドイ。ソロに突入してから徐々にダウナーな演奏になってくる。しまいには、ジミ自身もストーンしかかってる自分をコントロールできなくなってしまい、ほとんど惰性で演奏してるだけなのだ。もう後半戦なんて、頭の中が真っ白になってしまったって感じ。これほどダウナーな演奏も珍しいので、逆に聞いてみる価値ありの物件か。
テンプル・ユニバーシティ・スタジアム
May 16th 1970
このアルバムでは個人的に最も楽しみにしていたテンプル・ユニヴァーシティ・スタジアムでのテイクだ。一発目は、ワイト島での演奏が印象的な「Sgt. Pepper's Lonely Heats Club Banb」。ワイト島とはまた一味違うソロが聴けるぞ。
それから、2曲目。これもガツンと来る「Johnny B Goode」。30日のバークレーよりお先に披露している。
オーディエンスも嬌声を発して、まさにノック・アウトって感じ。話は変わるが、この日はサポートに今は亡きジェリー・ガルシアA率いるグレイトフル・デッドが付いている。
70年代と言えば、やっぱり「Machine Gun」だ。この日最長の10分を超える演奏。ユニヴァイブが強力にアピールされるソロは、若干まとまりに欠けるが、押しの強さはピカイチだ。
「Foxy Lady」は3:57とコンパクトながらも、サビや展開時に目新しいフレーズが目立ち、内容は濃い。
このアルバムでは3回目となる「Getting My Heart Back Together」。1、2曲目が10分以上の弾きまくり状態なら、こちらは後半から「Keep On Groovin'」に繋げるという70年代にはよく見せる継投策を披露してくれている。「Keep On Groovin'」への継投は、バルチモア(1970年6月13日)で「Voodoo Child」〜「Keep On Groovin'」を聴けるが、こちらは完全に「Voodoo Child」から乗り移った演奏をしている一方、この日は歌だけ「Keep On Groovin'」なので、曲自体の雰囲気はそのままである。そして、最後はお馴染み「Purple Haze」〜「Voodoo Child」で決まり。2曲合わせて10分というコンパクトな締めくくりだ。「Puple Haze」終了後は間髪を入れず「Voodoo Child」へ。なんとなく消化不良な感じは否めないが、まあこんな日もあるでしょう。
さてさて、ファンに涎垂ものの音源を次々と送り出しているダンデライオン。一時は落ち着いていたジミヘン・ブート界に新たな風を送りこんでくれている。オフィシャルではヘンドリクス・エクスペリエンスが気をはく中、ブートでもウーピー・キャットやミッドナイト・ビートに続くレーベルになってほしいものだ。
August 14th 1999 K.Seki
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