Personnel
: Shigeo
Nakano (vo,g), Toshiyuki Honda (b), Toshiya Kurasawa (dr)
Producer : All arranged by Shigeo
Nakano and Shigeo Rollover
バンド・オブ・シゲオ・ロールオーバーに感心させられるのは、その多角的なジミ度の高さもさることながら、常にジミ・ファンを楽しませるパフォーマンスに心を砕いている点である。ジミ・フリーク、特にギターをプレイするフリークがしばしば陥りやすい「どうだオレのプレイってジミそのものだろ?」みたいな押しつけがましい一人よがりに中野シゲオは陥っていない。
彼らがここまでの地位を築いた礎には、先駆者的な立場や活動期間の長さだけにその要因があるのではなく、観客を楽しませる精神にあるのだと、僕は今年の追悼ライブを見て感じたものだ。その意味で、彼らはプロだ。
彼らが突出した存在として、他の追随を許さず今日まであるのは、まさに、こうしたプロ意識の高さから来るジミ・スピリッツの伝え方の上手さに所以するのではないだろうか。もちろん、その影にはジミに心酔する中野氏のジミ、そしてギターというものへの飽くなきこだわりがあるのだが。
さて、アルバム『LIVE AT ELECTRIC LADYLAND』は、そんな彼らバンド・オブ・シゲオ・ロールオーバーの限られた作品の中でも、そのライブ・パフォーマンスが楽しめる貴重1枚だ。時は1995年9月16日と17日の二日間、彼らの本拠地名古屋はエレクトリック・レディランドで行われた追悼ライブから、珠玉の演奏を編集したものである。
冒頭で述べた「ファンを楽しませる」バンドとしての態度は、クレジットを見て頂ければ分かるだろう。ジミのステージではヘビーローテーションとなっていた曲に加え、ほとんど聴くことのできなかった曲も登場している。こうした試みは、本アルバムをさらに興味深いものにしている。
例えば、1「3rd Stone From The Sun」は、1st アルバム『ARE
YOU EXPERIENCED』に収録されているインストだし、5「Little Miss Strange」は『ELECTRIC
LADYLAND』、7「She's So Fine」は『AXIS:BOLD
AS LOVE』からである。いずれも本家のステージでの演奏は実に珍しいものだ。
そして、いわゆるジミのスタンダードな曲に目を転じてみれば、そこではバランス良くミックスされたジミのフレーズとシゲオ氏のオリジナル・フレーズを聴くことができる。シゲオ氏の場合、このバランス感覚が実に良い。ジミらしさを損なわない形で、うまく自分のオリジナル・フレーズを織り込んでいるのだ。つまり、この時点で、シゲオ氏はジミの単なる「そっくりさん」ではなくなるのである。
例えが悪いと思うが、テレビのそっくり大賞に見られる現象と同じことが言える。どこの馬の骨だか分からないタレントが、昔懐かしい歌謡歌手のおそらく唯一のメガ・ヒットをものの見事に歌い上げる。
紅白のジャケットに身を包んだ司会及び似顔絵書きの針すなおを筆頭にヘッドフォンを耳に押し付けて関心しきりな審査員一同の様子は、皆さんもご承知のことだろう。
確かに似ている。似ているという部分では、申し分がない。しかし、いかんせんつまらない。要するに単にウマイだけなのであって、面白みに欠ける。本当に面白いタレントというのは、モノマネの捉えどころにセンスが光るものなのだ。
そして、それはいつのまにかオリジナルな部分とあいまって、当の本人とは別のもう一人の人格を創り出す。
と、こんな具合に、シゲオ氏の演奏には、ある意味ジミの手を離れた面白さがあるのだ。これは、単に面白さを付加させるばかりか、演奏に自由をもたらす。バンド・オブ・シゲオ・ロールオーバーの演奏には、コピー・バンドによく見られる用意された台本に追い立てられているような落ち着きのなさがない。
あくまでも、自分たちのスタイルにのっとった形で、その指揮をシゲオ氏が取っている。バンドのまとまりもそうだが、この自由さが、観客を楽しませているのだ。そして、この自由さにはシゲオ氏のオリジナルな演奏が大きく貢献していることは言うまでもない。
ここで少し曲について触れれば、「Hey Joe」ではイントロにウインターランド・バージョンをもってきており、うまくファンを惹き付けている一方で、リフ中にはオリジナルのフレーズがごく自然に溶け込んでいる。そして、「Them Changes」では、もはやシゲオ氏のオリジナルともいうべきソロが展開されるのだ。これは、本アルバム中最もシゲオ氏のポテンシャルの高さが感じられるのではないかと、個人的には思う。他にも、バンド・オブ・シゲオ・ロールオーバーの魅力が随所に味わえる曲が数多く収録されているが、それらは、彼らのステージで生で体験してもらいたい。
ジミのようにビジュアル面でのインパクトも強烈なアーティストを演じるということは、すなわち「似てる似てない」というその一点で評価されることも覚悟しなければならない。まるでそれが宿命であるかのようにだ。そして、このような態度は評価する上で最も簡単な受け入れ方であるが故に、その本質に迫る以前に、安易な判断を下してしまいがちである。しかし、一度この見方を捨ててみれば、また別の姿が見えてくるのだという事を本アルバムは教えてくれる。
何だか評論家よろしく、とうとうと語ってしまったが、このアルバムをじっくりと聴いてみて、今一度ジミのスタイルというものを考えさせられた。とにかく、百聞は一見にしかずというヤツで、現在進行形のこのバンドのライブを体験しない手はないだろう。アルバムに手を出すのはそれからでも遅くはない。
November
27th 1999 K.Seki