Producer
: Janie Hendrix, Eddie Kramer and John McDermott for Experience
Hendrix
ジミがこの世を去った後、オフィシャルでのアルバム発売は「わずか4年」という活動期間からは信じられない数にのぼる。
ライブあり、スタジオあり、ジャムありと数多の音源が発表されるも、その質となると疑問が残るものもまた多い。もはや「ジミ抜き」のアルバム作りは当然で、むしろ「いかにジミの意志に近づいたか」を売り物にするアルバムが鳴り物入り登場する状況が続いてきた。
その張本人ともいうべきアラン・ダグラスの仕事も賛否両論あるものの、個人的には商業主義に走りすぎてやしないかっていう思いが強いのが正直なところ。
そんな時代に一つの終止符を打ったのが、ジミの版権管理が家族のもとに戻ったことを受けて発足されたエクスペリエンス・ヘンドリクスだ。彼らの活動には目を見はるものがある。ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス時代のアルバムから、まさに総入れ替え(マスタリング面を中心に)を行い、ジミの新しい時代を創出していったのである。この刷新運動とも思えるエクスペリエンス・ヘンドリクスの活動は、既存のファンは元より新しい時代のジミ・ファンに大きな期待を抱かせることに成功している。
さて、本作『SOUTH SATURN DELTA』は、まさに今までの「ジミ不在」、「商業主義」といった背景から生まれたアルバムを丁寧にレストアしたような内容である。クレジットを見れば、特定の一枚のアルバムの焼き直しではないことは明らかだ。既に発表されている曲が目立つが、その実内容の方は鮮やか蘇っているといった感じ。
そして、何よりこのアルバムの魅力は、とかくライブに耳が向きがちなジミの演奏にあって、スタジオの魅力が十二分に楽しめる。それだけではない。『FIRST
RAYS OF THE NEW RISING SUN』が、ジミの意志を忠実に受け継いだ5枚目のアルバムなら、こちらではジミのあまりあるサウンドへの試みを随所にで溶け込ませているのである。中でも、アルバムタイトルにもなっている『SOUTH
SATURN DELT』は、最も分かりやすい形でファンにジミの試みを提供してくれている。1968年に収録されたジャズテイストを存分に盛りこんだこの曲は、ジミの行く末を想像するのに大変興味深い曲となっている。ホーンを採用し、ややビッグバンド的な雰囲気が時代を感じさせるものの、少なくともジミのサウンドへの飽くなき挑戦が垣間見れるのは面白い。
『SOUTH SATURN DELTA』は、明らかに今までのアルバムとは一線を画した新鮮なアルバムだ。ジャケットのジミはどうかと思うものの、これまたいつものジミとは違うショットという意味では、アルバムの内容に符号する部分が感じられなくもない。
「ジミが生きていたら、どうなっていたんだろう」というのはファンなら誰でも一度は考えてみる問題。そんなファンにわずかながらヒントときっかけを与えてくれるのが、このアルバムではないだろうか。
May 13th 2000 K.Seki