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〜最近読んだ本の書評OLD旧1〜




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〜本棚紹介〜
「本棚紹介」
「最近読んだ本の書評」3月
「最近読んだ本の書評OLD」
「最近読んだ本の書評OLD旧1」


「最近読んだ本からOLD」



前回以前のものをまとめています。


1997.10.12

1997.10.11
ガス室の真実〜本当の悲劇は何だったのか 西岡昌紀 日新報道 1997.6.10

 マルコポール廃刊事件の原因となった記事の本です。内容よりも、まず外国勢力の言論弾圧の象徴として読むべきだと思います。
 内容的にはユダヤ人の悲劇を否定するものではなく、ただ民族を根絶やしにするための虐殺収容所があったと言うことだけはおかしいのではないかとの事実を元にした指摘です。
 アウシュビッツを含めてポーランドにある強制収容所跡地にあるガス室展示施設は戦後作られたものであり、戦争中にあったかどうかは疑わしいことは事実であるようです。ラスコー壁画のように保存のために展示用の複製を作った訳ではないようです。
 また強制収容所で死亡したユダヤ人の大半はチフス(発疹チフス、昔言われていた腸チフスでない)に因るものであり、その遺体写真をガス室によるものと報道しているのはおかしいのではないかとの主張です。勿論収容所でのリンチに因る殺人までもを否定するものではありません。
 これらの主張はヨーロッパやカナダでは議論されていることであり、テレビ番組でも取り上げられています。ドイツ、日本、アメリカでこれらの議論ができないことが問題であり、イスラエル建国及び初期の中東戦争の戦費がドイツのユダヤ人虐殺賠償金で賄われていたことに疑問をていしています。
 1次資料を本人が直接翻訳して読んでいますし、アウシュビッツ他も現地で本人が写真をとってきています。私としては一度読んで見る価値はある本としてお勧めします。


大論理学 ヘーゲル 武市健人訳 岩波書店 1956.11.10

 その序論において、「常識をもって感覚的知性をもって思想に内実と実在性を与えるのでは理性は単に妄想を生むにすぎないとするのでは知識は私念となってしまう。だからこそ感性的存在のなかに真理がある」とするのは形而上学を超える論理学を期待する。この本を読みこなすことの楽しみを期待させる。(以上は単に高川の理解:本当は違うかも)
 事前に精神の現象学を理解ことを期待されているのはちょっと大変。また些末なことだが旧漢字で書かれているためにちょっと慣れが必要。
まだ読み始めのためこれでご勘弁を。


モンテスキュー世界の名著 中央公論社 1972.7.10

 「法の精神」は法律とは全存在の関係を定めることとする思想は、私にとって法律に対する意識を根底から見直させるものになった。全ての法律がこの前提に立っていればどれほど素晴しいものか!
 法律を作る官僚に是非とも座右の名にしていただきたいと思う。法とは思想そのものであることが認識できる好著。
 高校の教科書として皆が読めばいいのにと思える。


パース/ジェイムズ/デューイ世界の名著 中央公論 1968.2.10

 プラグマティズムを知りたくて読んだのだが、結局は実用主義と言われるように結果オーライなのだろうか?所詮、植民地上がりの米国には思想は根付かないのだろうか?
 誰か一人ではなく米国思想界としての風潮としてのプラグマティズムには根底がないと思えた。パースとデューイでさえ考え方に相違があり各論では実用的であるが、基本がないままと感じる。
 戦後の戦勝国の考え方としてその当時よく読まれたんであろう。今となっては否定のために以外の読む価値を見い出せない。(高川の独り言)


人種・進化・行動 J.フィリップ.ラシュトン 博品社 1996.11.25

 奇書の一つとして読んだ。黒人より白人が優れている、しかし同じ位かそれ以上に黄色人種が優れていると結論付けている。生物学的に人類を見ればこう言わざるを得ないことにキリスト教を信じる科学者が自己矛盾に陥りながら、データに基づいた研究成果を公表している。
 欧米でセンセーショナルを巻き起こしたことが分かる。反対的意見ならばデータの採取が現在可能な手段に限定されていることを挙げるであろう。全世界的なデータ採取が白人から要求されそうである。
 知能指数検査に関する考察は流石であり、巷の知能に関する新書類よりは科学的な考察が読める。
 ただ横書きの左綴じは本としては非常に読みにくい。ビジネス文書と同じ装丁だが何故こんなに読みにくいのだろうか?単に習慣なのだろうか。


瞬間の直感〜「瞬間と持続」改題 G.バシュラール 紀伊国屋書店 1969.12.25

 時間とは瞬間の連続であり、持続しているものではないというのは時間論を考える時に卓見に思われる。ベルグソンの連続時間論と双璧をなすものである。
 精神性を考える時に時間論は物理学の基本となる時間の一定連続よりもバシュラールの考え方に同意したい。詩人であることからヴァレリーやマラルメと同様に思想としては準扱いされることが残念である。


身体の哲学〜意味・言葉・価値 三輪正 行路社 1989.5.1

 身体論の入門書の次としてはいい本である。身体に興味がある人間にとっての思考の契機を与えてくれる。様々な示唆があり、楽しく読めた。
 大学の講義録を元にした本とのこと、この授業を受けた学生は幸せであると思える。


ソニー未知情報への挑戦 佐古曜一郎 徳間書店 1969.5.31

 ソニー社員によるソニーの超能力研究取組の報告。超能力というよりも感性研究として実際に実用化の可能性があり、世界企業の先行基礎研究の一部であろう。ホンダは火の玉研究をしているし、日本のフロンティア企業の底力を感じさせる。早く製品に成果が出ればと期待させられる。


ボスニア戦記 水口康成 三一書房 1996.7.31

 フリージャーナリストから見たボスニア報告。個人で在ユーゴ日本人救出に関与した報告は圧巻。いざという時に外務省がいかに邦人救出に動いてくれないかを実感する。カンボジア邦人脱出の例を見るまでもなく、結局国外での日本人は自力で逃げる以外ないことを教えてくれる。
 一部の写真でボスニアの真の悲劇を教えてくれる。それでも本当の悲惨な光景は写真公表を控えたようである。肉を剥ぎとった骨盤が200mおきに放置されている街の光景は文章表現のみである。


ボスニアで起きたこと〜民族浄化の現場から 伊藤芳明 岩波書店 1996.9.25

 エスニッククレンジングの現地取材報告。セルビア/クロアチア/モスリム三つ巴の敵対民族の虐殺の報告を実際の被害地を脱出した人からのインタビューで行っている。
 最初はクロアチア/モスリムよりの著者が長期取材するに従ってセルビア人に理解的になり、最終的には民族ではなく、一緒に住んでいる人同士は、個人的な憎しみや民族性を超えて外部の影響によって争いが起きていることそのものに怒っていることを提起している。
 報道の問題を現地の視点で問題化している。
 この本を読むと国連平和維持軍の存在が紛争の長期化を増長しているように思われる。


次の500年〜繁栄に終わりはあるか エイドイアン.ベイリー 徳間書店 1997.7.31
 ビジネス関連の未来予測と異なり非常に面白い。現実的でありおそらく当る予言となる部分が多いであろうと思われる。
 特に以下の2点、人口爆発は技術の進展で発生し、産業革命による人口爆発はこの先終息するという説(これはWHOも最近同じ予測をしたはず)と地球温暖化よりも氷河期の接近が大きな問題であるとの指摘は重要と思われる。
 近視眼的な世界政策提案者に読ませたいものである。フロンによるオゾン層破壊も実害はなく、旅客機による被害の方が多いとの話もあり、うわついた制限論者に引っ掻き回されるのはもう沢山である。


異言の秘密 山科誠 扶桑社 1992.12.30

 バンダイ社長の山科氏の聖書研究の本である。ユダヤの神YHVH(実際は右書きだからHVHY)の読みヤハウエ、エホバ、エロヒームに始まり、旧約、新約を通して事実に基づく神の存在探しです。モーゼの出エジプトに関する考察も秀逸です。またキリストの12使徒が実際には親族で占められていた等、文献から読みとった解釈は神話趣味の人には推薦の書です。
 山科氏は実業家でなく執筆家としても面白い存在になったことでしょう。ただ社員にすれば内の社長は何考えてんだろうってなってしまうでしょうね。


ビンゲンのヒルデガルドの世界 種村季弘 青土社  1994.8.15

 中世の幻視者ヒルデガルトの本。物語というよりも研究書よりですが、第2次十字軍の頃の中世世界がよく見えてくる本です。教会、貴族、修道院の関連がこれほどよく描かれているのはヒルデガルドという聖人を軸にしたからでしょう。
 音学をやっている人には有名でヒルデガルドのCDがもう5枚も出ています。


グノーシスとは何か マドレーヌ.コスペロ せりか書房 1997.9.25

 フランス人研究者によるグノーシスの概観です。1945年エジプトでのナグ・ハマディ文書の発見は1947年の死海文書に匹敵するものであり、異端とされているキリスト教グノーシス派の教えに関する正当な記録に基づく研究紹介です。
 カトリックがイエスと敵対していた人物で、イエスを死刑にしたファリサイ派でユダヤに住んでいたローマ人サウロ(後にパウロ)が啓示(イエスと名乗る光りとの出会い)で作ったパウロの宗教であるのに対して、グノーシスはキリストの教えをそのまま継承していると言われます。それゆえ、生前のキリストの教えを受けていないキリスト教会はグノーシスを危険な競争相手として異端と見なします。(この辺はユダヤ教会がキリストを異端視したのと同様です)
 差別民に普及したキリスト教に対して、グノシースは教養人に拡がっていきます。知識こそが神に近づく手段であり、自分自身を乗り越え神を見い出すというグノーシスは現代人にも共感するものがあるでしょう。米国でグノーシスブームだというのもうなずけます。


魔のヴァイオリン 佐々木庸一 音楽の友社 1982.2.10

 名器といわれるヴァイオリンが19Cや20C初頭にドイツの楽器商によって集められていた話しです。イタリアやロシアの没落貴族から名器のヴァイオリンを集めてくる情景はそれこそ日本で骨董品を回収してくるような世界が描かれています。
 昔の楽器は虫に食われることが多く、名品の内側が南京虫でびっしりなどとの表現が出てきます。殺虫剤がない時代では虫が楽器の大敵だったことが偲ばれます。
 今はグラスファイバーのハードケースがありますが、昔はケースごと踏み抜かれたヴァイオリンやチェロが一杯あることを知りました。
 魔性の楽器も出てきますが、名家の没落や趣味人が子孫に継承されないことを楽器の変遷から感じます。楽器の寿命は人間の寿命より長いことによるのでしょう。


天皇の戦争責任 井上清 現代評論社 1975.8.15

 天皇の訪独時に反対デモを行い逮捕された学生の弁護のために天皇の戦争責任を追及した本である。
 天皇と天皇が任命する首相の関連を示すよい本であるとも言える。木戸内大臣の役割と天皇がとてつもなく世間と離れていることを実感する。
 天皇の戦争指導に関する証言を丹念に集めているが、天皇の日本に対する一番の戦争責任とも言うべき噂の真実をつかんでいない。一部では東条首相がシンガポール陥落後、天皇に終戦工作を提案した時に天皇が激怒したことにより戦争継続が決まったとの噂がある。戦争初期の天皇の「戦果が早く挙がり過ぎるよ」との言葉まであげていながら、決定的なことに近づけていないことが残念である。


伊藤博文と安重根 佐木隆三 文芸春秋社

 伊藤博文暗殺に関する本である。丹念に事実を調べ、小説として読み応えのある本に仕上げている。
 史実に基づいて、ロシア在住朝鮮人の安重根が銃殺したことになっている。ただ検死官の報告として、銃弾は上方から打ち込まれていることを指摘している。オーム事件における国末長官狙撃事件と同様に犯人といわれる人が逮捕されながら、未解決の事件では裏である噂が流される。真犯人を逮捕することが、外交上の問題となる場合、自国人を犯人にでっち上げているとのことである。伊藤、国末の両狙撃事件ともロシア狙撃兵の噂が付きまとっている。まあ、安重根の狙撃計画は事実であろう。
 安重根が獄中で豹変したことは驚愕に値する。世間で鼻つまみのならず者が救国の志士に祭り上げられることで、人間として大成した。処刑される直前の安重根は立派であり日本人関係者からも敬愛されていたようである。


李朝滅亡 片野次雄 新潮社

 朝鮮史の本である。逆に明治維新から日露戦争までの歩みを時系列でつないでくれる好著である。特に日清戦争前後の歴史や当時の日本人の世界に対する思いを初めて知ることができた。
 日露戦争の東郷平八郎将軍のデビュー戦とも言うべきものが日清戦争であることや国際法違反すれすれの事件で始まったことなど、当時の状況がよく分かる。
 また当時の朝鮮国の状況を知ると、基本的に清国の属国でありながら、ロシアや日本を政争の具として取り込み、外圧を利用した宮廷政治が行われている。立場と東条人物の設定を変えれば、今の日本を見るようであり、外圧利用の政治が亡国の道であることが分かる。




1997.8.4

存在と時間 ハイデッカー 勁草書房 1060.6.10
 とかく難しいといわれる本ですが、ドイツ哲学翻訳の独特の文体にさえなれれば、現代語訳で読みやすい本です。一説には松尾啓吉さんの訳だけとても読みやすいとのことです。
 存在を実存から論じているんですが、基本的には思惟の中から見た存在(デカルト)と存在の外から見た場合の存在を話しているように理解しました。これは今でいう観察者問題であり、現在を生きる我々からすると当然の問題を当時初めて扱おうとしていたのかと思ってしまいます。
 同時期に相対性論で絶対座標と相対座標の観察者の立場で現象が違ってくることが提起されていますから、そういう時代だったんでしょうね。今の我々が「存在と時間」を説明すれば非常に分かりやすい言葉でできるかもしれないなんて感じながら読んでいます。


インドの嵐 国塚一乗 高木書房 1997.5.26
 チャンドラ.ボースに関するマンガです。一般には名前くらいしか知らないインド独立の父です。インドではガンジー、ネールと並ぶ人として評価されていることは知っていても、何をした人かどんな人かに関しては日本では知っている人のほうが少ないでしょう。
 まさか旧日本軍とともに、自由インド仮政府代表としてインド国民軍としてインパールでイギリス軍と第2次大戦中に戦っていた人とは。しかも亡命先のドイツからUボート、伊号潜水艦で喜望峰沖を経由して日本にやって来ていたとは。
 終戦時にインド独立運動継続のためにソ連軍に接触するために満州に移動する途中の台湾で航空機の離陸時の事故で亡くなった人だなんてことを知っている日本人が何人いることでしょう。
 日本人は侵略戦争の謝罪をするだけでなく、アジアの国々の戦後の独立への貢献もしていた事実を誇ってもいいのではないでしょうか?


トリノ聖骸布の謎 リン.ピグネット/クライブ.プリンス 白水社 1995.12.25
しばらく前に話題になっていた本です。学術的な考察を分かり易く説明した部分と推理小説仕立ての部分で楽しく読める本です。
 ダヴィンチファン必読というところでしょうか?敬虔なクリスチャンは読まないほうがいいのでしょうが、中世協会の問題をあからさまにしているとも言えます。
 楽しい本と言う意味で長期の休暇中の読むのに丁度いいとも言えます。


ブラヴォー・ツー・ゼロ孤独の脱出行 クリス.ライアン 原書房 1996.12.1
 湾岸戦争でのイギリス特殊部隊SASの話しです。7日間ほとんど飲まず食わずでイラクからシリアまで300kmを脱出した話しです。湾岸戦争で最大の脅威であったスカッドミサイルの発射地点捜索のためにイラク領内に潜入したがいいが、敵との接触、連絡不通となり、救援も補給もなく、敵地奥深くに孤立した7人の物語。戦争の事実を知るにはいい機会の本かもしれません。
 ただ民間人を殺すことに罪悪感の無いことに、若干の人種差別的なものを感じるのは私が黄色人種だからでしょうか?


宦官 顧蓉/葛金芳 徳間書店 1995.11.30
 中国には科挙があるといわれるが、同様に宦官という制度もある。官僚と宦官どちらも大事でありというか、有益でもあり、弊害も大きかったシステムといえる。中国人自らの宦官研究のために、時代の流れに沿った記述ではないため、読みにくさもある。
 宦官というものの本質的な問題を説いている貴重な文献といえる。出来ることならイエニチェリとの比較検討が欲しい気がするが、共産中国人にそれを求めるのはないものねだりであろう。
 中国史に関しては日本では三国史位しかポピュラーな読み物はなく、これを読むとあまりにも、隣国の歴史を知らないことに慄然とする思いである。
 学校教育で日本史並みに中国史の勉強が必要であることを痛感する。


国際法概説 香西茂他 有斐閣 1967.12.25
 国際法に関する教科書です。MLで国際裁判に関することが話題になったときに、感覚だけでものを言っていて、あまりにも自分で国際法そのものに関して知らないことに気付き、慌てて購入して読みました。
 感覚と実際のズレの大きさに驚いたものです。しかも定説がなく、いまだ流動的なことと条文化されて承認されたもの全てが国際法になる等ということは全く知りませんでした。また国際的な規定に不服を感じ従わないためには、常にその旨を意志表示し続けなければいけないことなど、考えもしていませんでした。
 国際法を勉強することで、今の日本が曖昧にしている領土問題等は事ある毎に当時国だけでなく、世界に向けて主張しなければいけない国際ルールを知りました。
 国際化を叫ぶ前に国際法と国と国のつきあい方学ぶべきだと気がつきました。
 湾岸戦争の時の報道でも、国際法を説明した上で、イラクの進行の正当性と不当性を判断した議論が必要だったことを改めて感じた本です。


法学論 H.ケルゼン 木鐸社 1977.7.15
 法律とは何か、何に基づいて法律が出来てくるのかを紹介する本。
 普段、弁護士のいう事に違和感を感じているが、かれら法律関係者が社会的なモラルや倫理ではなく、法律的な正当性に基づくことを気付かせてくれる。
 社会的な合意であるコモンセンスは所詮、時代性に左右される共通意識に過ぎなく、絶対的なものではないこと、単なる集団リンチに陥らないための理性を法律に感じる様になれる本です。
 高校教育位でここまでは教えて欲しかったな〜と思う私です。


世界の名著「ベンサム/J.S.ミル」 中央公論社 1979.10.10
 功利主義を知りたくて読み始めました。これも言葉だけ知っていて、実際は何か知らないものでした。最大多数の最大幸福位しか知らない功利主義ですが、ベンサムの考えていたことは、多数決などではなく、マイノリティの意見尊重も踏まえたしごく真っ当なものです。
 今の世の中こそ本来の意味での功利主義が重要だと認識した本です。


自然現象と心の構造 C.G.ユング/W.パウリ 海鳴社 1997.1.14
 ユングの共時性に関する論文です。ユング自身が感じていて、説明出来ないながらもどうしても語らずにはいれなかった共時性を説明しています。東洋の易を検証の道具とするなど苦労の跡が感じられますが、ピートのシンクロニシティより、よほど真実に近い所に迫っていることを行間から感じます。共時性に関心がある方は必ずこの本を読む事をお進めします。


世界の名著「パース/ジェイムズ/デューイ」 中央公論社 1968.2.10
 プラグマティズムというより実用主義の原点である3人の紹介と主要文献の紹介。
 読めば、実用主義とはいかにもうまい訳だなと感心してしまう。利己主義に陥るといわれるプラグマティズムの本質をみる気がする。またプラグマティズは哲学でないといわれることに共感を覚える。
 米国の思想的な背景といわれるプラグマティズム、こんな考え方が科学や商業を発展させるのだろうが、これでは主張に芯が通っていないことに納得してしまう。米国理解の原点ともいえる本。




1997.5.25
睥睨(へいげい)するヘーゲル 池田晶子 講談社 1997.1.22
 全体に一般的な哲学で題材とされるものに関して、身近な例を出して考えるとはどういうことかを説明してくれている。オピニオン雑誌の寄稿記事を再編集したもの。
 しかし池田晶子さん自体の考え型を色濃く反映した本である。始めて池田晶子さんを読む人や哲学的素養のない人には取っ付きにくいきらいがあるが、2冊目としては最高かもしれない。
 考えるとはどういうことかを思い悩んでいる人には指針となるべき良書。良き師に出会った気がする本であった。

1997.5.25 悪妻に聞け 池田晶子 新潮社 1996.4.25
 帰ってきたソクラテスに続く哲学入門書。ソフィーの世界が流行った直後の本でもあり、哲学史の勉強と哲学とは全く異なることを教えてくれる。
 初心者向け。御気楽エッセイ。
 柄谷氏批判が気になるが、実生活で何か確執でもあるのであろうか?哲学者が批評家を批判する必要性もあるまいし。

1997.5.25
 哲学史勉強の入門書。ソフィーの世界何かより遥かに読み得。
 日本でもこんなに読みやすい入門書があるとは。筆者の好みで、フランス哲学がでてこないのは寂しい。
 古典を読む必要性を実感する書であり、その意味でも入門書としては最適。

1997.5.25
軍事思想史入門 浅野祐吾 原書房 1979.5.20
 戦略・戦術史を明確に歴史的に解説したもの。有名どころだけでなく、実戦で活躍した戦略家も説明。
 日本でもこれだけまともな研究をしている人がいることは喜ばしい。有名な戦略に関しては、記述不足で元本を読むことを私は勧めるが、それが手に入らないことに問題がある。どこかに軍事図書を閲覧できる図書館の設立が待ち遠しい。


1997.5.25
子供の誕生〜アンシャンレジーム期の子供と家庭生活 アニエス みすず書房 1980.12.10
 冒頭の「人生の諸時期」とそれに続く「子供期の発見」は必読に感じる書である。ヴァレリーを始めとしての子供を役割理論的に解明している。
 副題でもある子供と家族生活は冗長に感じるが読む価値はある本だろう。

1997.5.25
デカルト 世界の名著27 中央公論社 1979.8.10
 方法序説を読む必要性を感じて購入したが、入門書ではなく古典を読む必要性を痛感した。大学でこれを読む学生は幸せである。
 デカルトが言っているが、誰もが十分に持っていると確信している良識をベースに考えるとの表現は皮肉に感じられ声を出して笑ってしまった。
 特別有名な「我思うゆえに我有り」がほんの一パラフレーズに過ぎないことに驚きを覚えた。
 デカルト主義者は信じることが出来ると思える最良書。

1997.5.25
閔妃暗殺〜李朝王朝末期の国母 角田房子 新潮社
 日本の近代をこんなにも知らなかったとはと気付かせてくれる本。
 日韓関係の複雑さを実感させられた。しかしこれ読むことで、日韓史に興味が出ればそれで著者の目的は達成されたことになるのだろう。
 日本女性の目で見た偏らない過去の歴史は貴重なものだろう。
 ただ文章がこなれていないことは重ね重ねにも残念。

1997.5.25
ICA〜模様石に秘められた謎 ペトラトゥ&ロイディンガー 文芸春秋社 1996.10.1
 偽書ではないのだろうが現段階ではデニケンのクラスの半分眉唾ものである。
 ただ店頭で見かけて、買いそびれて手に入れるまでの日が長かった。
 南米で発見されている遺物とのことだが、神々の指紋等のいいかげんなものではないため、早く公表された研究が望まれる。
 オリオンミステリー並みの楽しい本であった。

1997.5.25
蘇我王朝と天武天皇 石渡信一郎 三一書房 1996.3.15
 飛鳥の石造物を中心に蘇我氏の異説を展開している。
 未だ解明されていない遺物と日本史の比較文化人類学的考察をまとめ上げたもの。読む価値はあったと思える。
 この解釈であらためて日本書記を読みたいと思わせるもの。
 蘇我氏に関しては様々な異説があるが、藤原氏と異なりなぜあそこまでひどく歴史教育されるのかは昔からの疑問である。いずれ修史が行われるのだろう、それを感じさせる書である。

1997.5.25
天皇になろうとした将軍 井沢元彦 小学館 1992.5.10
 足利義満に関する考察。外戚としてではなく、後から外戚関係をでっち上げることで息子を天皇としようとしていたことを考察している。
 読み物としては非常に面白いのだが、井沢さんの本に特有の裏付けが曖昧でまともな本を求める。雑誌連載の記事を本にする場合はそれなりの手順を踏むことを求める。
 ただ足利氏も何故あれほど人気がないのかは良く理解できた気がする。裏事情に通じる歴史家にとって、許されざるべき纂奪者で有ることには違いない。

1997.5.25
裏切られた三人の天皇〜明治維新の謎 鹿島昇 新国民社 1997.1.20
 この本が世に出たことは非常に喜ばしい。平成の世にならなければ絶対に表に出ることが許されなかったであろうことは創造にかたくない。
 明治天皇に出生の疑問があることは昔から囁かれていた。様々な維新本のあとがきで子供の頃病弱だった明治天皇が上京した途端、荒武者然としたことに対する疑問は指摘されていた。
 ここで孝明天皇(江戸末)毒殺説、明治天皇のすり替え説を公表したことは大変意義があることと思える。
 また著者は様々な文献からの裏付けと遺族からの聞きとり調査を行っており、南朝復権の歴史的意義をもちゃんと分析していると思える。
 冒頭で指摘している太平洋戦争のシンガポール攻略完了後の東条英機による休戦提案を昭和天皇が叱りつけたことを研究した次回作が望まれる。
 天皇崇拝者である、私にとっても歴史の真実は非常に興味深いとともに重みの有るものである。
 朝鮮戦争時に昭和天皇が毎日西を向いて心配していたとの伝聞にもその真意を推し量る研究が待ち遠しい。


1997.1.2
こんな日本に誰がした 谷沢永一 クレスト社 199.6.16
 副題ー戦後民主主義の代表者大江健三郎への告発状ーとある通りの内容。論旨は正しいのだろうが、ちょっと個人批判が強すぎて読みにくい。
 日曜朝のテレビ討論の話しの方が聞きやすい。同じ著者の違う本を読んでみたい。
 ただ一節に「日本国民を土人と読んだ浅田彰」との記述がある。前後の脈絡なく、一部の引用で氏の全人格を否定する言には我慢がならない。谷沢氏の普段の普遍的な発言を快く思う私には残念で仕方がない。全体的に酒席の世間話的内容と考えて読むべきだろう。


森を守れが森を殺す 田中淳夫 洋泉社 1996.10.7
 原生林と林業の関係をエコロジー的に記述している。一般的なエコロジー運動の現場での矛盾を指摘している。なかなか面白い。
 けっこう現場に足を運んでいるフリーライターの印象を受ける。本人が農学部出身のため、研究者や林業従事者へのインタビューも積極的・実際的に行っている。ボランティアでエコロジー運動をしている人には必読かもしれない。私はディープエコロジーの立場をとるが、著者の引用した論文は読んでみたいと思う。エコロジー関係の良書の一つと言うと言い過ぎだろうか。


複雑性とは何か エドガール・モラン 国文社 1993.11.15
 話題の複雑系or複雑性の中心人物モランの著述を簡潔にまとめたもの。フランス思想界の話題の人モランを理解するうえで自己組織化ー>自律性ー>複雑性への過程を理解する入門書かもしれない。 注にあるように本人が書いたものではなくビアンシがモランの著述をまとめたものをモラン本人が監修したもののようだ。とてもモラン本人の文章とは思えない。モランの「方法」の方が文書量は多いが、正確に本人の言わとするところが分かるという意味で数段読みやすい。これがモランと思われると悲しい事態を招く本だと思う。なぜモラン本人の名前で出ているのだろう?

 1997.1.1 Eーmail:tomotaka@pp.iij4u.or.jp


1997.1.1
  続日本紀 国史体系(普及版) 吉川弘文館 1972.8.30
 文武天皇から桓武天皇までの官制国史です。
 全て漢文。読むのが大変。もっと漢文の勉強やっておけばよかった。理系で選択だから高校時代は捨てたツケが今に回って来ている。
 普段聞いているのとは違う古代の世界が見えてきます。驚くのは新羅の国使と太宰府の記述が頻繁に出てくること。現代の歴史に駐日大使や通商代表部特使の話しがこんなに出てくるだろうか、戦後のマッカサーではあるまいし。
 それと菅原道真や安倍晴明、弓削道鏡が暗躍する時代です。その手の方にはたえられない原典ですね。


Back リュウ・ハナブサ 新潮社フォトミュゼ 1996.8.25
 日本人カメラマンの後ろ姿写真集。神々しいまでに美しい写真が一部含まれています。
 トルソーと同じように顔(特に目)が写り込まない裸体には純粋美を感じるものがあります。被写体が西洋人のせいか、エロティシズムよりも神々しさを感じてしまいます。ギリシャ彫刻の肉感的な印象をやわらげた美しさです。購入の価値有り。


陰陽道物語 滝沢解 春秋社 1996.10.25
 最近流行りの陰陽道紹介です。現代的な解説、誰が読んでも抵抗なく読める入門書。多少ニューエイジ的な解説の印象。
 人気の安倍晴明から艮(うしとら)の金神までと易、呪術までを網羅。専門書を読む前の景気付けに最適。多少かじっている人には歯ごたえがないのが残念。



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